「ネット銀行に全部断られたら、最後は信用金庫」。この順番をすすめる記事はよく見かけます。
ただ、信用金庫にはネット銀行にはない手続きがあります。訪問です。支店の担当者が実際に会社を見に来ます。
バーチャルオフィスで登記している人にとって、ここは避けて通れない論点です。先に結論を言うと、不可能ではありませんが、不利にはなります。そして金庫によって判断が割れます。
信用金庫は、口座を作るときに会社を見に来ます
これは特定の金庫だけの話ではありません。
Q&Aサイトには「信金は口座作成時に会社訪問されますが、住所が変わると引っ越し先も再訪問されるでしょうか」という質問が投稿されています。訪問があること自体は当然の前提として書かれています。
2015年の別の相談では、回答者がこう説明しています。信用金庫の場合は事務所の内見が入る。ペーパーカンパニーでないことを確認するため。自宅兼事務所なら問題ないが、バーチャルオフィスや空っぽの物件では審査が厳しくなる、と。
ここは押さえておいてください
書かれているのは「厳しくなる」であって「できない」ではありません。私が調べた範囲では、信用金庫がバーチャルオフィスを一律に断っているという公式な記載は見つかりませんでした。実際、2022年の相談では回答者が「田舎の信用金庫でギリ審査に通るかどうか」という見方を示しています。つまり、可能性はゼロではないという扱いです。
さわやか信用金庫では、訪問が必須でした
運営者が関わった法人のひとつで、さわやか信用金庫の法人口座を開設したことがあります。オンラインスクール事業の会社でした。
さわやか信用金庫は東京都心部を基盤とする信用金庫で、営業区域は大田区・品川区と、神奈川県の川崎市・横浜市です。
先に断っておきます
この会社はバーチャルオフィスで登記していません。マンションの一室を事務所にしていました。つまりこれは「信用金庫ならバーチャルオフィスでも開設できる」という実例ではありません。そこは混ぜずに書きます。
このとき訪問面談は必須でした。選べる手続きではなく、支店の営業担当者が来ることが前提として組み込まれていました。
正直、聞いたときは面倒だと思いました。オンラインスクールなので、見せるものが何もありません。パソコンが1台あれば成立する事業です。在庫もないし、設備もないし、来客もない。訪問されて何を見せればいいのか、当日まで分かりませんでした。
担当者が何を見に来ていたのか
実際に来てもらって、後から考えると、確認していたのはおそらくこの3つです。
- 事務所が本当に存在しているか
- 代表者がどういう人物か
- どんな事業をしているのか
設備や在庫は見ていません。オンラインスクールなので、そもそも見るものがなかった。見に来ていたのは、場所というより人だったのだと思います。
ネット銀行の審査に代表者の人柄は関係ありません。書類が要件を満たしているかどうかだけです。信金は人が来て、話をして、判断しています。ここが決定的に違います。
何を基準に合格だったのかは、最後まで教えてもらえませんでした。いまでもよく分かっていません。ただ、書類だけでは越えられなかったものが、会って話すことで越えられたのは確かです。
ネット銀行と信用金庫は、確かめ方が違う
ネット銀行は書類だけで判断します。だからドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)のように、必要書類が運転免許証1点で済む銀行もあります。逆に言えば、書面で足りなければ機械的に落ちます。
信用金庫は人が来ます。書面で伝わらない事情を口頭で説明できる余地がある反面、訪問先に何かがなければいけません。
バーチャルオフィスだと、訪問で何が起きるのか
ここが読者にとっての本題だと思います。正直に書くと、確かなことは分かっていません。
バーチャルオフィスは住所を借りるサービスで、多くは無人です。受付に人がいる会社もありますが、それはバーチャルオフィスの受付であって、あなたの会社の事務所ではありません。訪問した担当者がそこで何を確認して帰るのか、想像がつきません。
ただし、だから必ず落ちると決まっているわけでもありません。考えられるのはこのあたりです。
- 訪問先がバーチャルオフィスだと分かった時点で、その場で断られる
- バーチャルオフィスの受付で担当者と面談し、事業の説明をして通る
- そもそも訪問がなく、来店と書類だけで完結する金庫もある
- 実際の作業場所(自宅など)で面談してもらえる
どれになるかは金庫と支店で変わります。「信用金庫はバーチャルオフィス不可」と断言している記事があれば、その根拠を確認してください。私が探した限り、そう明記した一次情報はありませんでした。
確実な方法はひとつだけです
候補の金庫が決まっているなら、申し込む前に支店へ電話して直接聞いてください。「バーチャルオフィスの住所で登記していますが、法人口座の開設は可能ですか」と聞くだけです。Q&Aサイトにも「飯能信用金庫はバーチャルオフィスでも開設可能か」といった、特定の金庫を名指しした相談が投稿されています。一般論では答えが出ないから、名指しで聞かれているわけです。3分の電話で分かることを、何週間も推測で悩む必要はありません。
もうひとつの壁が営業区域
信用金庫には営業区域があります。その区域内に事業所があることが、取引の前提です。都市銀行やネット銀行にはない制約です。
ここで、バーチャルオフィス利用者にありがちな詰み方があります。
- 東京のバーチャルオフィスで登記している
- 実際に住んで働いているのは地方
- 東京の信金からは「実体がこちらにない」
- 地元の信金からは「登記が区域外」
手続き上はどこにも違反していないのに、どちらの窓口にも当てはまらなくなります。都内の信金は数十金庫あって区域も細かく分かれているので、大田区の住所を借りたのに実際は世田谷区にいる、といった程度のずれでも話がややこしくなることがあります。
すでに口座がある人が、あとからバーチャルオフィスに移転したら
これは意外と多い相談です。2024年にも投稿されていました。海外に住むことになったので、テナントを引き払ってバーチャルオフィスに本店を移したい。そうすると、すでに持っている法人口座が止められることがあるのか、という質問です。
その人はネット銀行と地元の信用金庫の両方に法人口座を持っていました。
結論から言うと、移転しただけで口座が即座に凍結されるという話ではありません。ただ、本店移転の届出は必要ですし、届出を受けた金融機関が改めて事業実態を確認することはあります。先ほどの質問にあったとおり、信用金庫は移転先に再訪問することがあります。
開設のときは実体のある事務所で通ったのに、移転先がバーチャルオフィスだと再訪問で説明が必要になる。ここは開設時より見落とされやすい落とし穴だと思います。
それでも信用金庫を使う意味はあります
融資の相談ができる
これが最大の理由です。ネット銀行にも法人向けの融資はありますが、担当者と顔を合わせて事業の話をしながら進める形ではありません。創業期に地域の金融機関と関係を作っておくことには、口座を持つ以上の意味があります。
紙の通帳が発行される
ネット銀行は原則として紙の通帳を出しません。補助金の申請や、取引先から通帳の写しを求められる場面で、紙の通帳があると手間が減ります。
全国どこの信用金庫でも記帳できて、ATM手数料も無料
これは口座を作るときには意識していませんでした。使い始めてから気づいた利点です。さわやか信用金庫の通帳でも、別の信用金庫のATMで記帳ができます。
調べてみたら、仕組みとして2つ用意されていました。
ひとつは通帳記帳相互サービスです。全国の提携信用金庫のATM相互間で、普通預金(総合口座)と貯蓄預金の通帳記帳ができます。ただし新しい通帳への繰越だけは、口座を作った信用金庫でないとできません。
もうひとつがしんきんゼロネットサービスです。全国信用金庫協会が案内しているサービスで、信用金庫のキャッシュカードがあれば、北海道から沖縄まで47都道府県に設置された約1万7千台のしんきんATMで、入出金の手数料が無料になります。
- 平日 8:45〜18:00 の入出金が無料
- 土曜 9:00〜14:00 の出金が無料
- それ以外の時間帯と日曜・祝休日は所定の手数料
- 一部、対象外のATMもある
都市銀行の口座だと、記帳しようと思えば自行のATMを探すことになります。地方に行ったときに支店が見つからず、帰るまで記帳できないということが普通に起きます。信用金庫は町のあちこちにあるので、近くの信金に入れば済んでしまう。地味ですが、これは思っていたよりずっと楽でした。
できることとできないことの線引き
他金庫のATMでできるのは記帳と入出金です。通帳の繰越は自分の金庫でしかできません。対象となる通帳の種類が限られていたり、提携先が一部の金庫に限られる通帳タイプもあります。
面談で説明できる
書面に書ききれない事情がある会社ほど、人に会って話せることが効きます。書類が完璧に揃わなくても、話して納得してもらえる余地があります。これはバーチャルオフィス利用者にとっても、使いようによっては武器になります。
信用金庫を狙うなら、こうしてください
- 申し込む前に、候補の金庫の支店に電話して直接聞く。これが唯一確実な方法
- 営業区域を先に確認する。区域外なら、そもそも話が進まない
- 訪問があることを前提に、事業内容を口頭で説明できるようにしておく
- 見せるものが少ない事業なら、何を話すか決めておく。場所より人を見られている
- バーチャルオフィスで登記しているなら、ネット銀行と並行して動く。信金だけに賭けない
- すでに口座がある状態で移転するなら、届出後に再確認が入る可能性を見ておく
まとめ
- 信用金庫には訪問がある。ネット銀行のように書類だけでは終わらない
- バーチャルオフィスだと不利になる。ただし一律に不可という一次情報は見つからなかった
- 判断は金庫と支店で割れる。だから支店に直接聞くのが最短
- さわやか信用金庫では訪問が必須だった。ただしその会社はバーチャルオフィスではない
- 見られていたのは場所というより、代表者と事業の中身だった
- 営業区域の制約があり、登記地と居住地がずれるとどちらの金庫にも当てはまらなくなる
- すでに口座がある会社が移転する場合、再訪問や再確認が入ることがある
- 融資の相談ができ、紙の通帳が出て、全国の信金ATMで記帳と入出金ができる利点はある
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