せどりや中古品の売買を始めるとき、古物商許可が要ります。自宅の住所を出したくないので、バーチャルオフィスの住所で申請できないか。そう考える人は多いと思います。
結論から言うと、使えません。しかもこれは「審査が厳しい」という話ではなく、法律の複数の条文が重なって成立しない構造になっています。
調べ始めたときは、条件次第では取れるのだろうと思っていました。実際に条文を追って、バーチャルオフィス側の回答も見て、考えが変わりました。
バーチャルオフィス事業者自身が、使えないと書いています
全国60拠点以上を展開しているKarigoの公式サイトに、こういうQ&Aがあります。
Q. 特定派遣事業届出や古物商届出に住所使えますか?
いいえ。実際のスペースが必要となる事業への届出には弊社提供の住所はご利用いただけません。
これは大きいと思います。住所を貸している側が、この用途では貸せないと明言している。利用規約に書いてあるということは、仮に申請が通ったとしても契約違反になりうるということです。
同じ会社が、法人登記については「はい。全店舗、登記にご利用可能な住所となっております」と答えています。登記はできるが古物商はできない。この線引きがはっきりしているのがポイントです。
法律の側から見ると、条文が4つ重なっています
なぜ「実際のスペースが必要」なのか。古物営業法を読むと理由が分かります。
第13条:営業所ごとに管理者を1人選任する
古物商は、営業所ごとにその営業所の業務を適正に実施する責任者として、管理者を1人選ばなければなりません。
警視庁の申請案内を見ると、管理者についても略歴書・住民票の写し・誓約書・身分証明書の提出が求められています。形式的に名前を書けばいい役職ではありません。
第4条第10号:管理者を選任できないなら不許可
そして許可の基準に、こうあります。営業所ごとに管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者には、許可をしてはならない。
無人のバーチャルオフィスに、業務を適正に実施する責任者を常時置いていると説明できるか。ここが最初の壁です。
第12条:営業所の見やすい場所に標識を掲示する
古物商は営業所ごとに、公衆の見やすい場所に定められた様式の標識を掲げる義務があります。バーチャルオフィスの共用受付に、自分の会社の古物商プレートを貼らせてもらえるでしょうか。
第14条:買取は営業所か、相手の住所でしかできない
これが一番意外でした。古物商は、営業所または取引相手の住所・居所以外の場所で、古物を受け取ってはいけないと定められています。
つまり営業所は「登記上の住所」ではなく、実際に古物を受け取る場所として想定されています。バーチャルオフィスを営業所として届け出ると、法律上はそこでしか買い取れないことになる。でも実際には自宅で受け取っている。これは形式と実態がずれます。
もう1つ、許可取消しの規定もあります
公安委員会は、古物商の営業所の所在地を確知できないとき、その事実を公告して30日経っても申出がなければ許可を取り消すことができる、と定められています(第6条第2項)。無人の住所は、この観点でもリスクを抱えます。
「使える」と書いてある記事には注意してください
検索すると、条件次第で取れるかのように書いている記事が出てきます。
最終的な判断は所轄の警察署なので、絶対にありえないとまでは言えません。ただ、上に挙げた条文を全部満たす説明ができるかというと、無人の住所では現実的に難しい。
通ってしまったあとのほうが怖い
仮に申請が通ったとしても、それで終わりではありません。バーチャルオフィスの利用規約に違反していれば、契約を解除される可能性があります。そうなると営業所の住所が使えなくなり、古物商許可のほうも変更届か取消しの問題になります。「取れるかどうか」だけで判断すると、あとで大きな手戻りになります。
では、どの住所を使えばいいのか
自宅を営業所にできます
古物営業法の第4条第10号には、こういう括弧書きがあります。「営業所(営業所のない者にあつては、住所又は居所をいう。)」
つまり法律は、独立した営業所を持たない事業者を最初から想定しています。自宅を営業所として古物商許可を取ることは、普通にできます。せどりで始める人の多くはこの形です。
賃貸で自宅が使えない場合
賃貸の契約に事業利用の禁止条項があると、そのままでは営業所にできません。この場合は、大家または管理会社から使用承諾書をもらう形になります。警察署によっては賃貸借契約書の写しと承諾書の提出を求められます。
承諾が取れないなら、レンタルオフィスや小さな事務所を借りることになります。「実際のスペース」があるかどうかが分かれ目なので、個室のレンタルオフィスなら要件を満たせる場合があります。バーチャルオフィスとは別物です。
それでも自宅住所を隠したいなら
古物商許可の申請には自宅を使い、Webサイトの特定商取引法の表記や名刺にはバーチャルオフィスの住所を使う、という分け方はできません。
特定商取引法の表記に載せる住所についても、消費者が確実に連絡を取れる状態であることが求められます。また古物商には、ホームページで古物取引をする場合の届出(URLの届出)もあります。使い分けようとすると、どこかで整合が取れなくなります。
そもそも古物商許可が必要かどうか
念のため確認しておきます。次に当てはまるなら許可が要ります。
- 中古品を買い取って売る
- 中古品を買い取って修理・部品取りして売る
- 中古品の売買を委託されて手数料を得る
- せどり(中古品を仕入れて転売する)
一方、自分が使っていた物を売るだけ、あるいは新品だけを扱う場合は不要です。ネットで完結していても、中古品を仕入れて売るなら許可は必要です。無許可営業は3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。
まとめ
- 古物商許可の営業所に、バーチャルオフィスは使えない
- Karigoは公式に「実際のスペースが必要となる事業への届出には使えない」と明言している
- 法13条の管理者選任、法4条10号の許可基準、法12条の標識掲示、法14条の営業制限が重なる
- 同じ会社でも、法人登記はできるが古物商はできない。用途で線が引かれている
- 自宅を営業所にすれば取得できる。法律も営業所のない事業者を想定している
- 賃貸なら大家の使用承諾書。個室のレンタルオフィスなら可能な場合がある
- 最終判断は所轄の警察署。該当するなら必ず事前に相談すること
バーチャルオフィスの使いどころ自体は残ります
古物商の営業所には使えませんが、法人登記や法人口座には問題なく使えます。自宅を古物商の営業所として届け出たうえで、取引先やWebサイトに出す住所を分けたいという相談は、そもそも成り立ちません。ただし古物商をやらない事業であれば、話はまったく別です。
法人口座の話はバーチャルオフィスで法人口座は開けるのかにまとめています。
各社が登記や郵便転送でどこまで対応しているかは12社の比較表で比べられます。


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